上海、徹夜明けの「焼饅頭」

DSC00098日本と韓国でワールドカップが開催されていた年、私は上海を何度か往復していた。香港出張で英語の通訳が必要なのは情けないが、言っていることの半分は分かる。しかし、上海語では挨拶ぐらいしかできない。もちろん通訳の方は一緒だが、トラブルは起きて欲しくはない。でも、そんな時に決まって起きるのがトラブルである。

問題は、とある印刷物の「色」だった。色校正の段階で、中国側デザイナーの指定した色と違う!という指摘。日本の担当に確認すると、指定通りの色だという。おかしい、そんなはずはない!と中国側は日本側を糾弾する。こんな時、普段以上に喧嘩腰に聞こえる中国語が分からないのは気にならず、直接言い返せない悔しさが溜まる。

…こんな時は冷静に事実関係を整理する。デザイナーの持つサンプルと、刷り上った色は確かに違う。でも、カラーチャートで比べてみると、指定された色はチャート通り。ん?もしかしたら…。調べてみるとデザイナーが使用しているカラープリンタの特性が出てしまい、そのプリンタで印刷した色のデータで指定すると、実際は違う色になってしまう、という結果。その事実を中国側に伝え(それでも、なぜか中国側は謝らない!)、日本と何度もやり取りを行い、徹夜でデザイナーに修正してもらうデータを至急日本に送り、刷り直しを行うことに。データの受取は翌早朝。ホテルの部屋でうとうとしながらデータを待つ。明け方、電話のベルが鳴る。来たか!

電話は今回のトラブルの通訳もしていただいた日本留学の経験もあるEさん。フロントで受け取ったのは、彼が先に受け取ってくれていたデータと、袋に入った暖かい「焼饅頭」。そうか、そう言えば夕食を取らずにいたんだ。思い出しながら、彼に感謝しつつ、アツアツをほお張る。野菜たっぷりの餡が口中に広がる。ぐはっ!うんまぁーいっ!…それは、これまで上海で食べた、どんな料理よりも美味しく、優しい味だった。

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